貨物運送業許可更新制度、適正原価、Gマーク・バス更新制度との関係についての考察

はじめに

2025年4月中旬現在、一般貨物自動車運送事業許可の5年更新制について議論が進んでいます。

その目的は運送業界をよくすることです

でも「どんな運送会社が良い運送会社なの?」という本質的な議論がされないまま、どんどん話が進んで行っている現状をとても心配しています。

大きな会社は良い会社なの?いやいや、日本郵政なんて点呼してないじゃないですか。それ以外にも大手運送会社は、そこの下請けに入ってる運送会社さんから話を聞くとロクなもんじゃないですよ。

Gマーク取ってるところは良い会社?そんなわけありません。Gマークはそれに関わってる人からすれば、あまりたくさんは言いませんが、本質的にはそんなに意味のある制度にできていないのが現状です。しかし、Gマークを取るということはそうでない会社より意識が高いことは事実だと思うので、その一点がいろんなところに波及して、平均的には意味があると思います。しかし、Gマーク自体でそれほど意味を持つものではありません。

 

平成2年の規制緩和を悪と言う人は多いですが、今更そんなこと言ってもどうしようもありません。世界の潮流に日本が逆らえなかった、ただそれだけです。消費者優先で考えたら仕方なかったわけです。それが無ければおそらく日本は30数年前に世界から取り残されてこんなに豊かな国でい続けられていません。最も反省すべきなのは、緩和した規制の締め付け方をまったく考えないでとりあえず緩和してしまう政府です。

 

この記事は運送業界のために書いているので、どんどんリンクで紹介していただいて構いません。

もちろん著作権的に自社のホームページにコピペする行為はおやめください。ごく一部(3行まで)の転載は構いません。

 

更新制度の目的とは?

この更新制は、悪質な運送会社を排除することと、運送会社の利益を上げることが2大目標だと思います。

利益については告示標準運賃でなく、「適正原価」以上の運賃を取ることを義務化する方向の用です。旅客で言う認可運賃のようなものなのでしょう。

経済の大原則ですが、モノやサービスの価格は市場が決めるのが今の自由経済の原則です。需要が供給より多ければ値段は上がりますし、需要より供給が多ければ値段は下がります。運送業界だけでなくほとんどどの業界もそのルールの下で経営しています。

だから厳しい言い方をすれば、過当競争で運送業界は儲からないと思っているのであれば、その業界には入らなければいいし、自ら退場すればいいのです。それが今の社会のルールです。愚痴だけ言っても始まりません。

ではどうすれば運賃が上がるのでしょうか?

それは簡単です、供給より需要が多いポジションを獲得すればよいのです。

周りと違うサービスをすれば、その供給より需要が多くなり、運賃は上がります。付加価値をどのように付けるのかが経営者の仕事です。たいした努力も勉強もせずに運送会社であれば誰でもできる仕事にい続けて、新しいことにチャレンジしないのであれば、その運賃が低いままなのは仕方ありません。

 

と、まぁ、ここまではただの正論です。

 

でも、こうも考えてみませんか?

「マジメに仕事するだけで普通に生活できる社会の方がよくないですか?」

みんながみんなイノベーションを起さないとやっていけない世の中って窮屈じゃないですか?そこまで才能がなくてもマジメに仕事するだけで生活できる世の中を多くの人が求めているはずです。

運送会社の社長もドライバーさんも基本的にはマジメな人が多いです。本当にマジメに仕事をしていると感じています。付加価値とかそういうのは大企業が考えれば良くて、零細企業はマジメにちゃんとモノを運べば家族を養える給料がもらえる、そんな世の中は心地が良いです。

しかし、現実はそうはなっていませんから、経営者は愚痴を言ってないで現実のルールに従って生き延びなければなりません。

 

「退場すべき悪質な運送会社」ってどんな会社なのでしょうか?

 

1.仕事を受けたのにちゃんとモノを運ばない 

 →退場すべき、というかそんな会社には誰も頼まなくなって勝手に潰れます

2.ほとんど対面点呼をやってない 

 →ルール上はもちろんダメですが、モノはちゃんと運ぶし、事故も起こさなかったどうでしょうか?

3.社会保険に入っていない 

 →ルール上はもちろんダメですが、モノはちゃんと運ぶし、事故も起こさなかったどうでしょうか?また、それで十分な運賃をもらっていてドライバー給料も高い。

4.改善基準告示を守らずに長距離走って稼ぎまくる 

 →これも同上です。

5.決算が赤字なのが数期連続 

 →社会環境などによって会社が赤字になってしまうことも仕方ありません。直近だとコロナ下では多くの企業が厳しい決算にならざるを得なかったと思います。赤字だったら即悪質な運送会社なのでしょうか?というか世の中の中小運送会社の半分以上が赤字です。

 

個人的には、社会保険に入ってなくて対面点呼やってない会社は退場すべきだと思いますが、それで荷主からのクレームは無くて、事故も起こしていなかったら、本当のところは退場すべきなのかわからないな~、と思いませんか?少なくとも明確に根拠を示せ、と言われたら示せますか?

 

今一度、貨物自動車運送事業法の目的を読んでみましょう。

(目的)
第一条 この法律は、貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとするとともに、貨物自動車運送に関するこの法律及びこの法律に基づく措置の遵守等を図るための民間団体等による自主的な活動を促進することにより、輸送の安全を確保するとともに、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。

第一の目的は輸送の安全、そして業界の健全な発達(つまりちゃんと利益を出せること)、公共の福祉(インフラの維持)です。社会保険や対面点呼自体がこれに関係すると思いますか?

 

社会保険未加入でそれによって価格競争力を生み出しているのであれば、それは卑怯ではありますが、それ自体が悪いかというと安全との相関はあまりない気がします。社会保険未加入単体と事故発生率の相関はほとんど無いはずです。

むしろ頼む方からしたら安くて良いとはならないでしょうか?安くてなにが悪いのでしょう?

鍵は1番目にあって、「誰も頼まない」会社が退場すべき会社になるわけです。だってそんな会社は自然と退場すると思いませんか?だから基本的には誰かが「あなた退場しなさい」というのはよほどのことなのです。

仮に、「退場すべき悪質な運送会社」を定義できたとしましょう。それはきっと冗談と思えるくらいの絵にかいた不良運送会社になるでしょう。その割合はおそらく1%あるかないか。

でも、最悪、ドライバーのSASにより、不幸にも何人もの死亡事故を起こしてしまったとしますよね。事故の重さで言ったらかなり重いですが、その会社は退場しないといけないほどに悪い会社なのでしょうか?みんなが営業所で毎日ビール飲んで出発するような会社であれば別ですが。

そんな1%あるかないかの会社を排除するために、残りの99%の会社が更新許可申請のために大量の書類を作らないといけないとしたらムダすぎないと思いませんか?

 

更新許可申請に頼らずとも、ご存知の通り他の手段のチェック方法が既に存在します。

・コンプライアンス → Gマーク

・社会保険未加入 → 見ればすぐわかる

・赤字かどうか → 決算書みればすぐわかる

・法定点検 →定期点検記録簿見ればすぐわかる

これらの点について国会議員の中でどのように議論されているのかがわからないですが、更新制の審査内容を検討するということは、これらの存在意義が軽んじられているのでしょうか?であれば、巡回指導とGマークの在り方を変える方が楽で有効だと思います。

私が実際にバスの更新申請をやった限り、まだこれらの方が意味があるし、内容をしっかり見てます。

こんなの分厚い更新申請書など必要なく、既に調査済みもしくは手続き済みでハッキリとした書類が存在するのだから1社5分で審査できますよ。

 

バスの更新許可申請の書類は何を作るの?

一足先にバスの更新申請が始まっていますが、本当に書類がめんどくさいだけで中身は空っぽです。

今後の収支計画だって適当に書けばいい、というか適当に書くしかないわけです。根拠のある事業計画を立てられて、ある程度その通りに計画を進められる会社なんて上場企業レベルしかいませんよ。中小零細企業は来月の仕事だってどうなるかわからないんですから。

1台ごとに、5年分の点検実施やオイル交換などについて「年月日、その時点の走行距離」を書きます。それらの点検関係書類が1台につき、8枚程度必要です。100台あったらそれだけで800枚ですよ。ヤマトなんて5万台以上あるのですからそれだけで40万枚、厚さにしたら40mですよ!!さすがにデータで申請することになるのだとは思いますが。それを作る手間も大変ですし、なにより運輸局担当者がその量を確認しきれると思いますか?しかもそれは点検記録簿を添付するわけでも、整備事業者の作業報告書を添付するわけでもないから完全に申請者が勝手にテキトーにそれっぽく作ってしまっても裏を取ることもできません。正直者がバカを見る制度になっています。そんな書類に意味があるとは到底思えません。貸切バスの更新申請書はものすごく分厚く数センチになりますが、意味のあるページと言えば、過去5年の損益計算書の収支だけではないでしょうか。貸切バスは連続赤字だと更新できない、というルールになってますが、実際は簡単な書類を付ければそれでも大丈夫ですから、本当に意味ない申請です。

しかもこのバスの更新申請、少なくとも関東運輸局では審査に1年かかることも普通です。一度本当に申請書の作成手引きと公示基準などを精読してみてください。そうすればいかに意味が無い書類をいかに膨大な量を苦労して作らされているかわかります。

貸切バスは貨物よりもコロナの影響を受けました。どんな会社だって赤字ですよ。それで更新申請やってなんの意味があるのでしょうか?貨物は旅客にならうのが通例ですから、同様の書類を求められると考えるのが自然です。

ここで業界挙げて、具体的な申請書類の中身について口出ししていかないと、本当に大変ですよ。

 

白トラの排除

更新制の議論の中で、白トラの排除についても触れられています。

今まで、悪質な運送会社を排除するという話をしてきましたが、悪質な運送会社より白トラ問題を解決する方が先だと思いませんか?

白トラの台数なんてそんなにいないよ、と思う方、それは全くの間違いです。

世の中には、白ナンバーでゴミを運んでいる廃棄物収集運搬事業者がいくらでも走っています。なんなら自治体のゴミ取集はほとんど白ナンバーのパッカー車です。

貨物自動車運送事業の定義は「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」です。要するに自分の所有物でないものをお金をもらって運ぶ行為はすべて運送業許可が必要なのです。ゴミだからいいでしょ、という理屈はそこには存在しません(しないはずです。してたらすみません、逆に教えてください)そもそもなにをもってゴミとするかが難しいです。リサイクルするものはそもそもゴミではありません。誰かにとって不要なものはゴミとなったらそれはなんでもアリになってしまいます。「ゴミだから白ナンバーで大丈夫」それは乱暴すぎます。そもそも運輸局公示には「一般廃棄物収集運搬事業者が緑ナンバーを取る場合は特例で1台からでも取れる」としているのですから、廃棄物収集運搬事業者が緑ナンバーが必要なことは国土交通省的には求めているのは明らかです。この特例は一般廃棄物が対象ですから、産業廃棄物収集運搬事業者が緑ナンバー取る時は5台無ければ取れません。

私が考えるギリギリの理屈は「ゴミの所有権を収集運搬事業者を得ることとする」コレでしょう。民法上、所有権の移転は双方の意思表示が必要なので、自治体と自治体が委託する収集運搬事業者に対して各家庭が包括的に「ゴミの所有権を移転する」意思表示をあらかじめしておく必要があるでしょう。もしくはゴミとして放棄した時点で元の所有者は所有権を放棄して、無主物になっているのでそれを「所有の意思を持って占有」したとなれば白ナンバーでも行ける可能性はあります。ただし、その新所有者が自治体のみであれば依然として収集運搬事業者は無許可運送事業者ですから、収集運搬事業者まで含めて包括的にその関係になる必要があります。ただし、所有者がゴミといえども所有権を放棄せずにゴミ処理場まで運び、ゴミ処理場に到着して焼却など終わった時点で所有権を放棄することを求めている場合も考えられるので、その点も処理する必要があります。しかし、もしそれが可能だとしたら、収集運搬事業者に所有権が渡るわけで、その収集運搬事業者がそのものを自分の家に持ち返ったりリサイクル屋さんに売っても良いということになり、その筋もムリに思えます。やはり、自治体に所有権が移転するところがギリギリではないでしょうか。で、収集運搬事業者は自治体(他人)の需要でモノを運ぶわけですから、これはどう読んでも運送業に当たってしまいます。

 

平成10年に国交省が以下のような文書を出しています。

廃棄物処理法と自動車運送事業法との関係

標記については、今後、下記の取扱いにより対処されることとされたい。

自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、自動車を使用して貨物を運送することを言い、かかる行為は、貨物自動車運送事業法の対象となるところである。

ただし、他人の需要に応じ反復継続的に運送する行為であっても、当該運送行為が自己の生業と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる行為は、当該運送行為は、主要業務の過程に包摂しているものと認められ、自動車運送事業の許可を要しない。

廃棄物の運送については、各地方運輸局等において、生業と密接不可分性等の観点から許可の必要性の有無を判断しているところと思われるが、必ずしもその取扱いが統一されていない現状にある。このため、今後は廃棄物処理業者が自ら処理施設を保有し処理まで行うものであるかどうかにより判断するものとする。

具体的には、自ら処理施設を持たず、収集・運搬行為のみを行う場合においては自動車運送事業に該当することとなるが、各局における従来からの指導の経緯等も踏まえ、許可の取得等については適切に対処されたい。

 

どうでしょうか。平成10年以降にこれを覆す文書が出ているのであれば話は違いますが私の知る限りでは出ていません。出ていたらぜひ教えてください。

ゴミを収集運搬している事業者のうち、自ら処理施設を保有し処理まで行う会社は何社あるでしょうか?正確な数はわかりませんが、ほとんど無いことは明らかです。つまり、この文書からすると、日本全国に違法なゴミ収集車が走り回っているのです。そして一般ゴミについては自治体がその違法業者に委託しているのです。法治国家としてありえないと思いませんか?

 

白ダンプ無許可営業問題

箱車や平ボディで白ナンバーは目立ちますが、ダンプもミキサー車も理屈は同じです。

2025年、大阪万博の工事現場に出入りしていた白ナンバーダンプが無許可営業で逮捕されました。(「村上商店」、「俵商店」、「BOND Line」等)

https://www.sankei.com/article/20250312-QY2U72SZCBLITDWSYOJJT3YNUU/

また、噂だとその流れで全国に白ダンプの取締りがあり、千葉でも同様の事業者が逮捕されました。(「小松土木」、「金井興業」経営者と「島興業」経営者等)

https://snews.fromation.co.jp/archives/112210

 

私もお客様に「先生、知ってますか?今、ダンプ業界で激震が走ってるの?」と教えてもらいました。ダンプ会社は緑ナンバー許可を持っていても、緑ナンバーは最小台数にして、他にたくさんの白ナンバーで個人事業主ドライバーを使っているケースが多いです。なぜなら緑ナンバーにするとたくさんの義務が発生するからです。

そことは別のダンプ会社は、そのニュースを受けて、10台以上ある白ナンバーを全て緑ナンバーにしました。それまで基本的には「ゼネコン現場は緑、そうでなければ白」という業界ルールがありましたが、それが揺らいでいるようです。私としては仕事になるわけですが、周りに白ダンプが走り回っている中で、コンプラ意識の高い会社が業界内で不公平な負担を受けて緑ナンバーにするのにはとても違和感を覚えます。

ダンプ会社の人達は自分達が白ナンバーで走って良いのかどうか不安なのです。周りには白ナンバーダンプ事業者ばかりです。赤信号みんなで渡れば怖くない、状態で仕事をしているのです。みんながやってるから大丈夫、そんなことは絶対ありません。やられるときはやられます。国はそのような宙ぶらりんの法的不安定な状態に事業者を晒しているのです。まさに懈怠としか言いようがありません。

 

世の中のダンプ、ゴミ収集車を全て緑ナンバーにしないといけないのか?

しかし、こうも考えられます。

国内全部の白ダンプを緑にしろ、と言ったら日本経済は止まってしまうと思いませんか?

運ぶものを買い取って自分のモノにしてから運べば違法ではありません。しかし、それは現実的ではありません。

ミキサー車も、運んでいる中身は自分で買い取った物でないことの方が多いでしょう。そうすると白ナンバーミキサー車もめちゃくちゃ走ってますがみんな違法です。

なにより、家庭ゴミを毎日運んでくれている事業者さん、そしてマジメに働いているドライバーがみんな違法なことをしているということになります。それを全部緑にしろ、となったら、日本中がゴミで溢れます。

しかし、「そうしたら大変」だからと言って許可を取らなくていいなんて理屈は通りません。だから、平成10年に国交省は自分の立場として、主に環境省及び自治体の環境担当部署を想定して、「廃棄物処理業者が自ら処理施設を保有し処理まで行」わないで収集運搬する事業者はすべて貨物自動車運送事業法の無許可営業とする、と公言したわけです。ちなみに無許可営業は「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」でかなり重い罰です。

 

去年から、私は横浜市の環境担当部署に上記のことを問合せて何回かやりとりしています。

結論から言うと「横浜市は委託する事業者が緑ナンバー持っているかどうかを考慮してない」ということでした。私は上記の平成10年の文書について伝えているにも関わらずです。

つまり、横浜市は違法と認識しながら、白ナンバーのパッカー車事業者に市の一般ごみ収集を運搬しているのです。我々の税金が違法事業者に支払われているということになります。

廃棄物収集運搬でも緑ナンバーつけてる事業者もいるんですよ、そうしたら公正な競争になりません。

 

誤解しないでいただきたいのですが、私はこれらの事業者を取り締まってほしいと言ってるのではありません。むしろ、グレー(という言葉で違法状態を見ないようにしている完全な黒)でいることでストレスや不安を抱えているこれらの事業者が、白ナンバーでも違法にならないように正式に特例の文書を出してほしいのです。これらの事業者から少なからず「うちの仕事は違法なのでしょうか?」と相談があります。その人に「本当は違法なんですよ」と言うのも結構辛いものです。なぜなら緑ナンバーを付ける選択肢は無い上で「違法じゃないんですよ」と専門家に行ってもらいたくて来てるのですから。産廃収集を1台でやっている人で、それで家族を養っている人は廃業です。そんなのは辛すぎます。でも違法状態を放置してるのは絶対におかしいです。正直者が損をする世の中の方がよくないと思いませんか?

国交省も数えきれないほどにこのような相談を受けているはずなのに、ちゃんと環境省とすり合わせてはっきりした見解を示した文書を出さずに放置して、なにかあったときは容赦なく捕まえる、こんな不安定な法制度下では国民は安心して過ごせません。

 

ダンプはゼッケン取ってれば白ナンバーでもいいの?

ダンプにはゼッケンというものがあり、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」で定められています。大型ダンプは○建とか○営とかのゼッケン番号を付与されて自重計適合証に記載され、その番号を車体に表示しなければなりません。でもよく考えてみると、自己所有物以外のものを運ぶことが多いのに○営(これが緑ナンバーの大型ダンプのゼッケン)以外のものがあるのがそもそもおかしくないですか?

もしゼッケンをつけていたら運送業許可がいらないなら、500万円以下の建設請負契約を建設業許可業者と結んで○建ゼッケン取って白ナンバーでガンガン貨物を運んでしまえばいいことになります。(まぁゼッケンはダンプでしかも大型しか対象でないのですけど)緑ナンバーを持ち続けるのは大変なのですから、その方が絶対に楽です。運送業許可の更新制度が始まったら白ナンバーにして逃げちゃう人が続発する恐れがあります。

国内の輸送能力が30%以上足りなくなると言っているのに、緑ナンバーが減る方向の政策は愚策だと思いませんか?

 

産廃収集運搬許可取ってれば白ナンバーでいいの?

産廃収集運搬の許可は軽でもトラック1台から取れます。

これがやっかいで「自治体は産廃を運ぶのに1台からでいいと言ってるんだから1台でいいはずだ」と思い込みたいかもしれませんが、それは貨物法とはまったく関係ありません。

縦割り行政です。

ゴミを運ぶには収集運搬の許可が必要だ、それだけです。他人の需要で貨物(ゴミ含む)を運ぶには残念ながら国交省の運送業許可が必要なのです。それは産廃でも一廃でも同じ理屈です。

自治体は緑ナンバーのことは管轄外なので「廃棄物を収集するには収集運搬の許可が必要です」としかいいません「運送業許可は不要です」までは言えません、というか言う資格がありません。まありに無知であればそう言ってしまうかもしれませんが、自治体が判断することではないのです。

 

退場すべき悪質事業者の最良の判定方法とは?

 

以前に運送社長達とこの話題で議論したときに「ダメな会社ってなんとなくみんな知ってますよ」と言われて妙に納得してしまいました。実運送会社の口コミが一番効果的なのではないでしょうか。

私は運送社長達に、更新制度で審査されそうな基準を挙げて「これらの事業者は退場すべきでしょうか?」と問いました。すると意外なことに「そういう会社がいるからうちが仕事受けてそこに流して利益を取っていられる。必要悪のようなものだ。もちろん仕事をちゃんとやってくれなければ論外だけど」と言われました。これは少し意外でしたが説得力がありました。2時間の議論の末、結論としては「退場すべき悪質な運送会社なんていない」となりました。現実はそうなのです。みんな運賃が上がって欲しいとは思う一方で、誰かに退場してほしいとは思っていないのです。そう考えると、今回の更新制度の目的である「悪質運送会社を退場させる」対象の悪質運送会社がいなくなります。いたとしても先ほども言ったように、たった1%のとんでもない悪質事業者のために99%の事業者が大変な申請書を出して、役人にムダなことをさせる、つまり膨大な税金を無駄遣いさせる正当性をどのように説明できるでしょうか?行政経済的に不合理です。そんなの道路の全ての一時停止の道路標識のところすべてに警察官を365日24時間立たせるのと同じことです。

一方、5年ごとに更新制のある建設業許可は、そもそも運送業のような定期巡回指導がなく、5年に一度のときに必要な資格者の確認をします。また、工事請負契約書なども添付します。ある程度意味のある審査がなされていると考えてよいでしょうし、その添付書類も不合理な量ではありません。

 

「適正原価」とはなんなのか?

国交省が提示した標準運賃の計算方法では利益率が2.7%です。ということは、適正原価は標準運賃の100÷102.7=約97.3%にならなければおかしくなります。標準運賃の97.3%ももらえたらきっとすべての運送会社がウハウハになります。しかも、この算出資料では実車率50%(復路は空車)で計算されているので、復路の荷物を得られたら超儲かるということになります。トラックドライバーが1日8時間労働で年収1000万も夢じゃありません!

https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000275065.pdf

また、これは実運送会社の運賃になるわけなので、その元請けが1割程度の利用運送手数料を上乗せして荷主もしくはその元請けに請求するということになります。

もしその価格でない価格だとどういうことになるか?それは実運送会社を生かさず殺さずの数字になることが容易に想像できます。「原価」=「運賃」だったら利益ゼロですよ。冷静に考えましょうよ。そしてその適正とされたギリギリの運賃を国交省が定めたとしたら、依頼側は適正原価までまけてくれるところを探すでしょう。せっかくここ2年ほどでやっと上がってきた運賃相場が、適正原価が法定されることにより破壊されてしまったら、この上昇の流れを取り戻すのにまた10年の月日がかかってしまいます。今は本当に現場としては運賃上昇の雰囲気を感じますから、どうかこのまま現場の力を信じて「本当の適正運賃」を市場に決めさせてほしいです。だって国交省や議員と話している運送会社はトラック協会の重役で倉庫を持っていたり、太い安定荷主がいる運送会社ばかりで、本当に困ってあがいている実運送会社とは体力がまったく違う人達です。その浮世離れした人達が、実運送会社の今の勢いを消さないことが一番大切だと思います。もっと実運送会社を信じてあげてください。

 

貨物の運賃と旅客の運賃の違い

旅客は路線バスを除けば混載が無い「貸切運賃」です。貨物の混載にあたるのが路線バスと言えるでしょう。しかし、路線バスは誰でも参入できる事業でないので一般貨物との比較にはなりません。法人タクシーも現実問題は新規許可が取れない都道府県も多いです。すると、比較すべきは貸切バスとなります。とは言え、一般貨物は貸切バスと違って混載することも珍しくありません。一般貨物は混載することで利益率をアップさせるのが企業努力であり、それが経営者の醍醐味だったりしますし、腕の見せ所です。しかし、標準運賃や適正原価というのは貸切を想定しており、混載すると運賃をもらいすぎてしまうということになります。従って、国が下限と決める数字によって消費者が過度に高い運賃を負担するのもおかしな話になります。一般貨物事業者の全社が貸切しかやらない、となればその運用も可能ですが、それでは積載効率が下がるのでそれは国の目指す方向ではありません。私は運賃を国が決められないのは、この混載が一番のネックだと考えています。では、混載する場合の適正原価と貸切の場合の適正原価を共存させるのか、となるとそれを取り締まるのは至難の業であることが容易に想像できます。

 

まとめ

運賃の「適正原価」を定めること自体は間違ってないですが、多様な運び方を考えると、おそらく意味のある数字を作るのは至難の業で、私は無理だと思ってます。

悪質で退場すべき運送会社が退場すべきこと自体は間違っていませんが、現実問題としてそのような運送会社を決まったルールで排除するのは不可能に近いほどに困難です。

ドライバーが減り、国内荷物が30%運べなくなるという中で、緑ナンバーを減らすなどナンセンスで、理論的にはもっと緑ナンバーを取得するハードルを低くするべきなのではないでしょうか?

バスの更新書類は量は多いけど内容が無意味ですから、同じ轍を踏まないようにする必要があります。巡回指導結果、法定点検記録簿、社会保険書類、決算書の存在意義を十分に理解して、運送会社に負担が無い許可維持審査をすべきです。それを考えると少なくとも、少なくとも何十ページを超える更新申請書類はただただ運送会社の負担を増やすだけで不要という結論になります。ただでさえ利益率をアップさせないといけないところに、そんなムダなコストをかけている余裕は運送会社にはありません。

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