さきほどの利用運送をわけて考えることについてもうちょっと具体的に考えてみましょう。
さきほど
利用運送の売上・経費も含めて考えてしまうと当然のことながら
・保険料の割合
・車両修繕費用の割合
・燃料費の割合
などの分母が大きくなるので上記割合が過少になってしまいます。
ということを書きましたが、わかりづらいかもしれないので具体的な数字で考えてみましょう。
たとえば
項目 |
金額 |
売上 | 4億円 |
そのうち利用運送売上 | 1億6000万円 |
運送原価合計 | 3億3000万円 |
そのうち外注費 | 1億4500万円 |
燃料費 | 2800万円 |
人件費 | 9600万円 |
保険料 | 950万円 |
という会社があるとしましょう。
この数字をもとに運送原価に対する割合を計算してみましょう。
(表1)
項目 |
金額 |
運送原価に対する割合 |
売上 | 4億円 | |
そのうち利用運送売上 | 1億6000万円 | |
運送原価合計 | 3億3000万円 | |
そのうち外注費 | 1億4500万円 | |
燃料費 | 2800万円 | 8.48% |
人件費 | 9600万円 | 29% |
保険料 | 950万円 | 2.88% |
これだけみると、「お、人件費率が29%って結構低いな~」という感じですね。
これを利用運送を除いた実運送部分だけで考えるとこうなります。
(表2)
項目 |
金額 |
運送原価に対する割合 |
売上 | 2億4000万円 | |
実運送原価 | 1億8500万円 | |
燃料費 | 2800万円 | 15.13% |
人件費 | 9600万円 | 51.89% |
保険料 | 950万円 | 5.13% |
お~、なんとなく実態に即した数字に近づいた感覚がありますね。
表1の場合、人件費率が29%でした。
これは運送業界としてはちょっと少なめですよね。
そして、同じような規模でも利用運送の割合が異なる会社で比較してみましょう。
さっきの会社を会社Aとします。
そして同じ売上4億円ですがすべて自社車両で運搬している会社を会社Bとします。
(表3)
項目 |
金額(会社A) |
金額(会社B) |
売上 | 4億円 | 4億円 |
そのうち利用運送売上 | 1億6000万円 | 0万円 |
運送原価合計 | 3億3000万円 | 3億800万円 |
そのうち外注費 | 1億4500万円 | 0万円 |
燃料費 | 2800万円 | 4700万円 |
人件費 | 9600万円 | 1億6000万円 |
保険料 | 950万円 | 1600万円 |
これで全体の運送原価に対する割合を比較してみます。
(表4)
項目 |
金額(会社A) |
割合(会社A) |
金額(会社B) |
割合(会社B) |
売上 | 4億円 | 4億円 | ||
そのうち利用運送売上 | 1億6000万円 | 0万円 | ||
運送原価合計 | 3億3000万円 | 3億800万円 | ||
そのうち外注費 | 1億4500万円 | 0万円 | ||
燃料費 | 2800万円 | 8.48% | 4700万円 | 15.25% |
人件費 | 9600万円 | 29% | 1億6000万円 | 51.94% |
保険料 | 950万円 | 2.88% | 1600万円 | 5.19% |
ご覧のとおり、割合がまったく異なりますね。
次は利用運送を除いた金額で割合を計算してみましょう。
(表5)
項目 |
金額(会社A) |
割合(会社A) |
金額(会社B) |
割合(会社B) |
売上 | 2億4000万円 | 4億円 | ||
運送原価合計 | 1億8500万円 | 3億800万円 | ||
燃料費 | 2800万円 | 15.13% | 4700万円 | 15.25% |
人件費 | 9600万円 | 51.89% | 1億6000万円 | 51.94% |
保険料 | 950万円 | 5.13% | 1600万円 | 5.19% |
するとどうでしょう。
大体同じような割合が計算されましたね。
これは数字のマジック!?
いやいや、物事は同じモノサシで測らなければいけない、とそれだけのことなんです。
このように、絶対的な数字ではなく、割合で数字を考えることは非常に大事なことです。
だから他の会社と人件費率の話をしたときに、売上を構成する事業によってそれが高いか安いかはまったくわからなくなってしまうわけです。
(表4)の状態で、会社Aの社長と会社Bの社長が会話をすると
会社A「おたくは人件費率が50%超えちゃってるなんて給料あげすぎなんだよ。うちなんて見てごらん。大体3割くらいだよ。これが適正なんだ、経費削減なんてやればできるんだよ」
会社B「う~ん、そうなのかなぁ。じゃぁ従業員の給与をもって減らさないといけないかなぁ・・・」
と、ここまではいかないでしょうけど、しっかり数字を区分しておかないと同じようなことが起きる可能性は高いです。他人事ではありませんよ。
ですからもっと言うと、目指すべきは
「売上金額より粗利率。貸借対照表の現金預金の金額より流動比率」
というように、”率”で考える、それが現金の面で強い会社となるための考え方だと思います。
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